正しい のは あやうい

何が正しかったのか さまよう。

どこかに隠していた 小石を

ぎゅっとぎりしめて

ああ、そう、この感覚だと

現実をつかみ直していた。



けれど

今は

握りしめる確かなものなど ないのだと

明確な正しさは あやういものだと


思うのは わたし自身が

あいまいに年齢を重ねただけなのか



不完全なかたち それこそが

正しいと 言い直し


もう 

失った小石の在処を

見つけ出すことはないと

安心している


「正しいこと」は あやうい

崩れ去ったあとは 景色さえ残らない

まよわない心は 心とはよばない


捨て去った 若かりし日の

真っ直ぐな視線は

何に向けられていたのか

うまく思い出せない