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憲法より 大切なもの
「憲法よりも大切なものがある。」
彼女から言われた時、びっくりした。
憲法をこよなく愛し、歴史や遺産を愛し、世界中を旅した彼女だったから。
「あれはどういう意味だったの?」と聞き返す機会を得ず、逢わなくなった。意味深く感じて、何の示唆だろうかと、時々考えてしまう。
高遠奈穂子さんが、「憲法9条を掲げなくても、平和憲法がここにある」、と語った記事がある(教育誌クレスコ)。戦後、復興のために一生懸命生きようとしている人々。小さな村の話だったと思う。黒い肌、きらめく瞳。子どもたちはカメラに向かって笑っていた。
地球上で、9条はあたりまえになり、人権は当然と思えたら。
育つにちょうどいい土壌。
肌にまとわりつく湿り気のある空気みたいに。
わたしたちの暮らし、そのものだと。
過去よりも未来に刻む記憶。
憲法より大切なもの。頭上にぼんやり浮かんでいる。
うまく形にならない。