東京電力。

企業のことなど、わからない(それでいいわけないけど)。


だけど。


3.11 札幌市民フォーラム 佐野真一氏講演会「津波原発」の中で、
東電OL殺人事件について短く語り、それは的を得ていると感じた。


著書の「津波原発」にも同じことが書かれてあり、
省略したものを引用する。


「東電の上司は、渡辺泰子が夜の仕事をしているのを知っていた。
彼女はよく会議でうたたねをしていたが、上司たちは注意するわけでもなく、
面白そうに、にやにやして見ているだけだった。
それは一種の虐待であり、セクハラだった。
・・・・・
彼女は、売春生活を続けていけば、殺されることを知っていた。
東電の陰湿な体質への仕返し、自分をそういう形で無視しつづける男たちへの
復讐であったに違いない。
彼女が殺されたあとも、東電側は彼女の売春生活を否定し続けている。」


彼女の才能や熱意を軽視した仕返し。
数少ない女子社員へのセクハラ、
真摯に仕事に向かう彼女を上手にだまし、
夜の相手をさせた上司(佐野氏のルポにより明白)への
復讐心・・・この解釈は、あたっていると思った。


父親の背中を見て育ち、真っ直ぐに仕事や社会へと向かった彼女を待っていたのは、
この、原発の対応で明らかにされている、東電の言い尽くせない体質であった。
わたしは、そう思う。



美しい誠実な気持を踏みにじられた時、女性は鬼になる。
自分を傷つけることで、仕返ししてみせる。
それが、結果、誰も救えず、より深みにはまってしまったとしても。
いのちを産み出す身体、慈しむ心を痛めつける。いのちへの逆行だ。


のしかかってくる女性差別の壁は厚い。
とりのぞこうともすべての生活の中に入り込んでいるから、きりがない。
男性は途中で手伝うのをやめる。日本でも、世界でも、だ。

この地球上で生きている限り、そこから逃げ出すことはできない。
理想を持っていた彼女だからこそ、「うまくかわす」ことなどできなかっただろうし、
むしろ、彼女の周りは、逃がすことなどせず、標的のようにいたぶったのではないか。

変わっていく彼女を見て、精神的なダメージを受けた社員はいないのか?
この陰湿さに、耐えられなくなった男性社員だって存在しただろう。



この9条の会のブログに書くべきではないかもしれない。
過激で偏っているかもしれない。

けれど、今日、この3.11に、わたしは、声を大にして言いたいんだ。
どれだけの、宇宙のような子宮をもつ女性たちが、いのちを産み出すことに怯え、
また、目の前にいるこどもを守るために、こころもからだも切り刻まれていることか。

福島から避難して来たお母さんたちの報告があり、静かでそしていつまでも終わらない
苦しみが会場に広がっていった。

黙祷をしたけれど、
わたしのこころの中は、ざわざわとした感じが何度も押し寄せ、
祈りよりも、噛み切れない気持悪さでいっぱいだった。

津波と原発

津波と原発