父の花 
〜いたわりや優しさをわけてもらいました。お盆に気持ちを通わせたほんの数分のできごと。〜
 車を走らせていると、純白のカサブランカをたくさん咲かせる庭がありました。降りて、見入っているとおばあさんが近くにいたので、「亡くなった父が好きだった花なんです。写メしていいですか?香りもいいし、こんなに咲いて素敵ですね。」と言うと、「そんなに好きだったのかい?持っていきなさい。」大きな花を切ってくださった。父はいつも病気がちで地味に生きていたため、華やかなカサブランカに憧れていたのかもしれません。部屋には桔梗を好んで飾っていましたが、「いいなあ。」と自宅の庭に一本だけ咲くカサブランカによく見とれていました。
 これもあげるよ、と今度はおばあさんの娘さんと、お孫さんが、対象的な真っ赤なグラジオラスを切り分けてくださいました。グラジオラスは幼い頃、私が好きだった花で、父にたくさん植えてもらったのを思い出しました。おばあさんとその娘さん、お孫さんまで見送ってくれて、通りすがりの知らない私に、とても親切にしてくださいました。あっ!名まえも聞かずにお別れしてしまった・・・不思議なできごとでした。


   


 花々はトランクにそっとのせてきました。家に着くまでずっとあまい香りに包まれて、心が透き通っていく感じがしました。