本当にあきらめていた出逢い。
もう、出逢うことはないとあきらめてた。
山田太一。
彼の小説は、もうないんだろうな、と。
今日、書店で見つけて即買いし、そのまま喫茶店で読む。単行本を待つことなんてできない。
帯に書いてあったのは、本人のことば。
わたしは、躊躇していたことを、声を大にして言う。
日本のことばは、縦書きがいい。
文章の明瞭さも、漢字、ひらがなの美しさも、豊かな文化は縦書きに秘められている。
古くさいと、偏屈だと、だからモテないんだと
そう言われたら、そうだよ、とかえそう。
なぜ、非難されると、遠慮してしまったのか。
もう、時間を無駄にはしない。
わたしは、声を大にしていう。
文字を、表記を奪われることは、国を奪われることと同義ではないか、と。
そして、アイヌの、韓国の、中国の、たくさんの人々の、それを奪ったことを恥じる。
なにも、叶わなかった。そして、叶うことのない人生だった。
あと数十年、わたしには残されているけど、きっと変らないだろう。
変らない、くだらない人生に、小さく灯る明かり。ふっと本物の笑顔が見える。
わたしは、山田太一が好きだ。彼の表現する不器用で、どうにもならないような、
好ましくない世界をのぞくとき、やけにリアルに小説が現実に思え、
フィルターがかかった自分と外界が、つながっていくように感じるのだ。
- 作者: 山田太一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/04/07
- メディア: 単行本
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