本から本へ 筒井康隆

 天才。秀才。奇人。柔軟。「まとも」な人。筒井康隆が、役者から出発したことを今更知る。「絶筆宣言」の背景は、本当のところ何があったんだろう。ロングセラーの時をかける少女、七瀬ふたたびはもちろん、「パプリカ」「愛のひだりがわ」はとても面白かった。 
 今「漂流 本から本へ」が発売中。大江健三郎が推薦。幼少時から、読書量がすごくて、戦中戦後を網の目にくぐって本を読みつづける。当時の様子はあまり語られず、本について言及している。海外本が多く、敵国の本として、没収されなかったんだろうか?どうやって、食いつないできたんだろう?とたくさんの疑問の中、自著小説の主人公と同じく、するりとかわして駆け抜ける。読書後の感想より、その本に出逢うエピソード、どのように影響をうけて、つぎの本と出逢うかが、とても面白い。筒井の小説、演劇、脚本、その後の人生が絡み合う。名著と言われたものにも、これはつまらなかった、と率直。だれにも媚びずに、語る姿勢は昔から変わっていない。本を語るとは、自分を語ること。想像以上に、豊かであたたかい筒井に、今までと違う感動を覚える。

漂流 本から本へ

漂流 本から本へ