人間らしかったんだ。実は。

人間になったんだと思う。 人魚姫は。

一途で けなげで 自分に正直。

ひたむきで 勇敢で 

ただ 人を 愛した。



あの 豪華な船の上で

だれよりも 人間らしかったのは 人魚姫だったと思う。

人のこころを 持ち続けたから

王子とはいられなかったんだよね。

やっと いまごろ わかった。

王子に選ばれるような 存在になったら

人間の女性にはなっただろうけど それは

たぶん 人魚姫が求めなかった 姿だと思う。

あこがれた 人間の女性の愛は どこか 噛み合ない 愛の形。

それも わたしからすれば 一方的に「男性が求めた女性の姿」。

それに合うように育てられた王女と 結ばれたんだろうな。

王女の行く末を考えてしまうけど 深めるのは いまはやめとく。

美しい人の こころを 手に入れた人魚姫は

それを失わないように 水の泡になって

海に 星空に すべてを包むところへと

とけこんでいった。