自由と平和と。

佐藤広也さんの学習会で 懐かしい詩に出逢いなおした。

林光の曲で、うたったことがある。
印象深い詩だったのですぐに思い出した。
わたしの生活は息苦しいほどの樹々の緑、
何もない空、ただ、歩くばかりの田舎道だった。
詩が広がるにつれて、当時のそこへと戻っていった。

広也さんは、北海道の図書館をまわり、
本のおもしろさ、詩の美しさ奥深さ、生活に染み入るような物語について
語ってくれる。


「自由」Liberte
          ポール・エリュアール(壺齋散人訳 最後2行はわたし訳)

  学習ノートに
  机に 木々に
  砂に 雪に
  ぼくは書きつける


  読み終えたページに
  真っ白な紙に
  石 血 紙 又は灰に
  ぼくは書きつける


  黄金の像に
  兵士の武器に
  王冠に
  ぼくは書きつける


  ジャングルに 砂漠に
  巣に 藪に
  子供の頃のこだまに
  ぼくは書きつける


  すてきな夜に
  白いパンに
  婚約した季節に
  ぼくは書きつける


  青いぼろきれに
  沼に カビの生えた太陽に
  湖に 明るい月に
  ぼくは書きつける


  野原に 地平線に
  鳥の翼に
  風車の影に
  ぼくは書きつける


  オーロラのきらめきに
  海に 船に
  悠々たる山に
  ぼくは書きつける


  あわのような雲に
  嵐のような汗に
  霏霏たる雨に
  ぼくは書きつける


  きらめく形に
  色鮮やかな時計に
  物質の真実に
  ぼくは書きつける


  上り坂に
  広い道に
  はみ出た場所に
  ぼくは書きつける


  燃えるランプに
  消えたランプに
  建て直した家に
  ぼくは書きつける


  鏡の中の 部屋の中の
  おいしそうな果物に
  ベッドに 貝殻に
  ぼくは書きつける


  食いしん坊のかわいい犬に
  ピンとたった犬の耳に
  不器用そうな犬の足に
  ぼくは書きつける


  玄関のステップに
  見慣れたオブジェに
  聖火の列に
  ぼくは書きつける


  調和した肉体に
  友達の額に
  差し出された手に
  ぼくは書きつける


  驚きのガラスに
  きりりと黙って
  引き締まった唇に
  ぼくは書きつける


  廃墟の隠れ家に
  崩れた灯台
  倦怠の壁に
  ぼくは書きつける


  欲望の不在に
  裸の孤独に
  葬式の行進に
  ぼくは書きつける


  回復した健康に
  なくなった危険に
  過去のない希望に
  ぼくは書きつける


  言葉の力を借りて
  ぼくは人生をやり直す
  その言葉がぼくを勇気付ける
  ぼくは ぼくに書きつける
 
  自由と