クレスコという冊子に。

 最初の見開きページ、著名人のエピソードが毎月掲載されます。すべてノンフィクション。「教師」や「教えてくれた人」がテーマで、思い思いのことが描かれています。

 若い父親が、幼い娘を残して不治の病になります。自分の死後、一年に一度、娘の誕生日に一冊ずつ渡すように、自分の父親(娘の祖父)に頼み、たくさんの日記を残します。娘が23歳の時、最後の一冊には「失恋しましたね。父もそうでした。相手をうらんではいけないよ。」とだけ、記されていたそうです。ぜひ本文を読んで〜。
 このエピソードをかいたのは娘ではなく、日記を預かった父の父・・・娘の祖父。「息子に教えられた。」とかかれていました。


 読後、一日座り込み、涙が止められなかった。
 愛し返す。
 そんなことも、できると思った。
 数年前、私の父が亡くなってから、彼から生きてる頃より愛され、応援されていると感じてきた。無償の愛は残り、与えつづける。同時に胸の中に鉛の塊も残した。名付けがたいくすぶったそれは、エピソードを読んで、私も誰かを愛したい、という渇望であったと知った。堂々と亡き父を愛し返すことで生きていこう、そんな一生を送ってもよいのではないか、と熱くなった。人は人を想うようにできている。誰かを心に住まわせて歩むのは、孤独なんかじゃなく、とてつもない勇気と冒険心だ。想われることばかり望み、彷徨っていた。誰かを愛したら丹田がしっかりする。釘をうったようにどっしり動かなくなる、と思えば、どこまででも広がり、恐れず進める。不思議なものだ。私は初めて、自分が大人だと思った。