道を

矢臼別の四季は美しい。獅子座流星群もここでは観ることができた。2時間だけ、さっと濃霧が晴れて数千個、数億個の星が飛び交った。ここで暮らす川瀬氾二さんへ宇宙からのあいさつだった。
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土の道を歩いて、樹々の中へ。
春の終わり、秋の始まりにモンキチョウがたくさん舞う。まるで菜の花畑かたんぽぽか。時期を忘れてどこへいく。入れ替わるように、晩秋はトンボの矢が飛ぶ。


夏は、道東の悪天候が続く。せっかく集まるなら、雨が降ってもおいしく焼き肉しようと、設計と大工をひとりでこなした川瀬さんだった。家も自力で何軒か建てる才能があった。
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時速4キロの人生。


そう言って笑った。


歩くように、生きる。歩く速さで、生きる。


頬杖ついて、いろんな話をしてくれた。
どこにもいかない。
もう誰も川瀬さんを矢臼別から動かすことはできない。
いつも明るい笑顔で穏やかな人だった。

川瀬氾二、この土地に、眠る。



                                光